業平(なりひら)の斜塔「東京スカイツリー」
今、墨田区業平橋付近に建設中の東京スカイツリーは、完成後は634メートルの高さになります。これほど高くなると、いろいろな不思議なことがおこります。その一つは、測量法上の頂点の位置が地上の位置とずれていることです。二つ目は、頂点での距離が地上より長くなることです。測量の基礎知識に基づいて謎解きをしてみます。
頂点の位置のずれ55ミリメートル
測量法で定められた水平(楕円体)面に対して、実際の水平面が図に示すように、18秒傾いています。その結果、測量法による頂点の位置は、次のような計算により
634メートル×18秒/(60秒×60分×180度/3.14)=0.055メートル
地表の中心位置から55ミリメートルずれることになります。「ピサの斜塔」になぞらえれば、「業平の斜塔」ということになります。
水平面の傾き
測量法に定められた水平の位置は、楕円体面が基準になっています。一方、水の流れがない水平面は、図に示す平均海面(ジオイド)で、地球内部の物質の密度の不均一から生じる凸凹した面です。タワーは平均海面を基準としてつくられます。
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下の図は、東京スカイツリーの東西および南北方向のジオイド高で、国土地理院のHPから得たものです。このジオイド高の傾きが水平面の傾きになります。東西方向8秒および南北方向16秒です。合計では18秒になり、最大傾斜の方向は概ね南東といってよいでしょう。
ただしピサの斜塔と異なり、東京スカイツリーの地表から頂点までの中心は地球の重力の方向とずれていないので、倒れることはありません。
タワーの頂上の距離は地表より長い
地球の半径は約6370キロメートルです。タワーの高さをキロメートルにすると、0.634です。地表とタワー頂上の距離の関係は、図から次の比例計算で示されます。
タワー頂上の距離=地表距離×{(6370+0.634)/6370}
=地表距離×1.0001
地表距離が10メートルの場合、タワー頂上の距離は10.001メートルとなり、1ミリメートル長くなります。
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東京スカイツリーの近傍にある「業平橋」は、平安前期の歌人である在原業平(ありはらのなりひら)にちなんだ名称。
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2010年8月
技術顧問 中根勝見