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セミ・ダイナミック補正と地殻変動補正パラメータ


目次
1.セミ・ダイナミック補正
 1-1 セミ・ダイナミック測地系
 1-2 セミ・ダイナミック補正
2.地殻変動補正パラメータ
 2-1 地殻変動補正パラメータの概要
 2-2 地殻変動補正の計算
 2-3 2011年度地殻変動補正パラメータ
 2-4 異なる元期の境界付近の地殻変動補正パラメータ
3.ネットワーク型RTKにおける地殻変動補正
4.セミ・ダイナミック測地系導入の背景とその経過
5.おわりに





2011年3月31日改正の作業規程の準則第43条は、「公共測量におけるセミ・ダイナミック補正マニュアル:2009年12月(以下、マニュアル)」http://psgsv.gsi.go.jp/koukyou/download/semidyna/index.htm の内容を一部導入しました。東北地方太平洋沖地震に伴い、地殻変動補正パラメータの提供が停止されていましたが、2011年6月27日、2011年度地殻変動補正パラメータが更新されました。http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/semidyna/
弊社は「2011CALENDAR:セミ・ダイナミック測地系」を制作しました。弊社の2011カレンダーと重複する部分もありますが、セミ・ダイナミック補正に関する解説を行います。

1.セミ・ダイナミック補正
セミ・ダイナミック測地系及びセミ・ダイナミック補正の仕組みを考察します。

1-1 セミ・ダイナミック測地系
日本もそうでしたが、世界のほとんどの国の測地系は、地殻変動を考慮しない「スタティック測地系(static datum)」です。この測地系は、既知点の地殻変動の影響が測量誤差として処理される欠点を持っています。国土地理院が提供している日々の座標であるF3解(小谷他、2009)は、「ダイナミック測地系(dynamic datum)」の一つと言えます。時間を考慮した4次元のダイナミック座標では、火山の変動状況等が把握でき、その噴火予知に役立ちます。一方、公共測量等で時間を考慮した座標系では複雑になり、処理が不便です。ダイナミック測地系では取扱処理が厄介、又、スタティック測地系では地殻変動が測量誤差として処理される等、何れの測地系も欠点が大きすぎます。その折衷が、「セミ・ダイナミック測地系」です。「hybrid static/dynamic datum」などとも言われることがあります。

1-2 セミ・ダイナミック補正
「公共測量におけるセミ・ダイナミック補正マニュアル(平成21年12月)」(以下、マニュアル)は、セミ・ダイナミック補正について、次のように定義しています。"セミ・ダイナミック補正とは、プレート運動に伴う定常的な地殻変動による基準点間の歪みの影響を基準点測量で得られた測量結果に補正し、測地成果2000 の元期(1997 年1 月1 日)時点における測量成果を求めるための補正である。"

図-1 均等な地殻変動地域のセミ・ダイナミック補正

図-1は、簡単にモデル化したセミ・ダイナミック補正の仕組みを表しています。電子基準点座標は元期で与えられていますから、地殻変動補正パラメータを使って元期から観測時の現在(今期)座標を計算します。未知点座標は、今期の座標として決定されます。未知点の今期の座標から未知点の地殻変動補正を差引いて、未知点の元期の座標をえます。
右図のように、電子基準点A及びBが均等な平行移動の場合、既知点の地殻変動と同量の地殻変動量が未知点から差引かれますので、セミ・ダイナミック補正はゼロになります。地殻変動が大きくとも均等な場ではセミ・ダイナミック補正はゼロになります。"

・セミ・ダイナミック補正の対象
日本全国1,200点余りの電子基準点の間隔は、約20kmですから、詳細な地殻変動を把握することができません。
マニュアル第2条は、"セミ・ダイナミック補正の対象とする公共測量とは、原則として、電子基準点のみを既知点として用いる1級基準点測量とする。"としています。公共測量以外では、基準点測量がセミ・ダイナミック補正の適用を受けています(マニュアル第8条)。具体的な対象は、次のものです。
■ 基本測量
 ・電子基準点の成果計算
 ・高度地域基準点測量
 ・国土調査に伴う基準点測量
 ・三角点改測、復旧測量
■ 公共測量
 ・1級基準点測量のうち、電子基準点(付属標を除く)のみを既知点として用いる測量


2.地殻変動補正パラメータ
マニュアル第3条は、"セミ・ダイナミック補正の適用範囲は、国土地理院が提供する地殻変動補正パラメータを提供した地域とする。"としています。又、第4条運用基準は、"補正パラメータは、原則として4 月1 日から翌年3 月31 日までの年度単位を適用期間として、当該年度当初に更新する。" と、1年毎に更新されますが、場合によっては年度途中で変更されることがあります。

2-1 地殻変動補正パラメータの概要
現在、日本全国に1,200点余りの電子基準点が配置されています。点間距離は、約20kmです。これらの電子基準点の地殻変動から、約5km間隔の格子点の地殻変動を推定します(図-2)。マニュアル及び作業規程の準則は、格子点上の地殻変動量を「地殻変動補正パラメータ」と規定しています。

図-2 地殻変動補正パラメータ

尚、GPS 連続観測が捉えた日本列島のここ10 年の地殻変動基準データ:測地成果2000(1997年1月1日)、比較データ:2009年1月1日 http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/semidyna/  に地殻変動の様子が示されています。「F3解」という座標が今期座標として使われていますので、場所によって地殻変動ベクトルの向きは図-2と異なります。

2-2 地殻変動補正の計算
セミ・ダイナミック補正は、国土地理院のHPから地殻変動補正パラメータ及びセミ・ダイナミック補正支援ソフトウェア"SemiDynaEXE for Windows"をダウンロードして計算することができます。
図-3は、国土地理院が提供している地殻変動補正計算画面です。
画面左上の「ファイル(F)」から、補正パラメータファイル 「SEmiDyna2011.par Ver.1.0.0」を選択します。次に、下記の 銑い泙任料択により地殻変動補正イ魴彁擦靴泙后
〆舵厳呂料択:平面直角座標 
∧篝喫法の選択:三次元補正 
座標系番号:9 原点緯度 36°、原点経度 139°50′
っ賄世虜舵検В=0.0m、y=0.0m、標高=0.0m
ッ漏綿册以篝機В=0.0018m、y=-0.0063m、標高0.054m

図-3 地殻変動補正計算画面(国土地理院による)

2-3 2011年度地殻変動補正パラメータ
国土地理院は2011年6月27日、「2011年度地殻変動補正パラメータ」を公表しました。図-4に示すように、新潟・長野・山梨・神奈川等東日本1都15県は、元期は2011年5月24日(2011.4)の改定成果です。1都15県の2011年度の地殻変動補正パラメータは、ほとんどゼロです。西日本は従来どおりその元期は1997.0であり、14年余りの累積地殻変動があります。従いまして、東日本と西日本の境界地域において不整合が生じます。その不整合の緩和のため、富山・岐阜・石川・福井の北陸4県の地殻変動補正パラメータが調整されているようです。又、静岡県と神奈川県の境界付近でも座標の不整合が生じないように地殻変動補正パラメータが調整されています(図-6参照)。

図-4 成果改定と非改定地域(国土地理院による)

表-1は、成果改定地域と非改定地域における地殻変動補正を計算した結果です。九州及び北海道の非改定地域の元期は1997.0で、2010年度及び2011年度の地殻変動補正を計算してあります。表-1に示す長野・東京・秋田の地域における元期は2011.4なので、地殻変動補正はほとんどなく、ゼロに近いものです。福井及び岐阜は成果改定地域ですが、元期1997.0と元期2011.4の調整地域のようになっています。

表-1 日本主な座標系原点における地殻変動補正(2010年度計算「SEmiDyna2010.par 」)
座標系 地域 緯度 経度 適用期間 元期 地殻変動補正
x(m) y(m)
2 九州 33° 131°00′ 2011年度 1997.0 -0.24 0.28
2010年度 1997.0 -0.23 0.23
6 福井 36° 136°00′ 2011年度   -0.11 0.21
2010年度 1997.0 -0.22 0.24
7 岐阜 36° 137°10′ 2011年度   -0.08 0.13
2010年度 1997.0 -0.21 0.10
8 長野 36° 138°30′ 2011年度 2011.4 0.00 0.01
2010年度 1997.0 -0.16 0.01
9 東京 36° 139°50′ 2011年度 2011.4 0.00 0.01
2010年度 1997.0 -0.14 0.02
10 秋田 40° 140°50′ 2011年度 2011.4 0.00 0.01
2010年度 1997.0 -0.15 0.02
12 旭川 44° 142°15′ 2011年度 1997.0 -0.34 0.22
2010年度 1997.0 -0.31 0.20

2-4 異なる元期の境界付近の地殻変動補正パラメータ
図-5は、弊社が「2011年度版地殻変動補正パラメータSemiDyna2011.par」を使って最大剪断歪を計算した結果です。成果を改定した東日本1都15県の地殻歪みはゼロに近く、この地域でのセミ・ダイナミック補正はほとんどありません。成果改定地域である神奈川県(元期2011.4)と従来の成果の静岡県(元期1997.0)との境界付近では、30〜40ppm程度と地殻歪が大きくなっています。この境界付近における歪が大きいのは、実際の地殻歪が大きいのではなく、境界付近における地殻変動補正パラメータの不整合の影響による見かけ上のものと思います。
元期2011.4と元期1997.0の境界付近の見かけ上の地殻歪を解消するため、富山等北陸4県に緩衝地域のようなものを設けたようですが、岐阜県と愛知県との境界付近及び岐阜・福井県と滋賀県との境界付近では、見かけ上の若干の地殻歪が図-5から見えます。

図-5 電子基準点の成果改定・非改定地域の地殻変動(最大剪断歪)
この図は、「承認番号 国地企調第261号平成22年11月17日」における
2011年度版地殻変動補正パラメータSemiDyna2011.parを利用して作成したものである

図-6は、図-5に示す緯度35°20′線上の静岡―神奈川の地殻変動補正を計算した結果です。静岡では約20cmの地殻変動補正がありますが、神奈川県の地殻変動補正はほとんどゼロになります。この不整合を境界で一挙に処理するのでなく、県境付近に緩衝地帯が設けられ、元期1997.0に対する約20cm補正値から元期2011.4のゼロの補正値へと徐々に段階的に減らしています。グラデーション処理とでも言えましょうか。

図-6 静岡県(元期1997.0)−神奈川県(元期2011.4)間の段階的な地殻変動補正

新東名道路のように、静岡県から県境を超え神奈川県へ通じる測量をした場合、公共測量の規定に基づく座標から算出した2点間は、実際の相対位置関係と異なります。国土地理院が提供しているF3解による日々の座標に基づいた2点間は、測量誤差の範囲内で、実際の相対位置関係になります。すなわち、元期1997.0と元期2011.4の地域における長峡物の測量成果は、公共測量と工事測量では異なった値となりますので、国土地理院に相談する必要があります。


3.ネットワーク型RTKにおける地殻変動補正
2002年度の世界測地系の施行に伴い、電子基準点データが公開されました。ネットワーク型RTKでは、単点観測と呼ばれる座標の観測を行うことができます。図-7は、2004年12月に千葉県県で行われた実証実験です(ネットワーク型 RTK-GPS を利用する公共測量作業マニュアル(案)(地形・応用測量)作成業務報告書平成 17 年2 月(財)日本測量調査技術協会位置情報・応用計測部会より)。3つの群の観測がありますが、左下の3点は地殻変動補正を行っていない結果です。元期1997.0から8年の経過があり、かなり大きな地殻変動により生じたずれです。

図-7 ネットワーク型RTKによる座標観測(基準は元期1997.0の1級基準点座標)

現在、VRS方式が二つ及びFKP方式の3種のネットワーク型RTKが実用化しています。ネットワーク型RTKの場合、ダイナミック測地系上で処理して未知点の現在位置を決定した後、未知点の地殻変動補正を行い、元期の座標を求めます。3種のネットワーク型RTKの何れも地殻変動補正を行っていますが、夫々独自の補正方法によっていますので、国土地理院提供の地殻変動補正とは異なったものです。筆者は、ネットワーク型RTKの観測における図-6に示した静岡県と神奈川県の境界付近の地殻変動補の方法を把握しておりません。配信事業者に確かめていただくとよいと思います。


4.セミ・ダイナミック測地系導入の背景とその経過
日本列島は4つのプレート上にあり、その地殻変動は複雑で大きいものです。測量法第31条で地殻変動への対処を定めていましたが、実際上は地震による地殻変動又は採炭等による地盤変動のように極めて大きな変動への対処で、定常的な地殻変動への対処はありませんでした。GPS測量等計測技術が格段に正確になった現在、その影響を無視できなくなり、それへの対処も必要になってきました。
日本列島と同等量の地殻変動の場にあるニュージーランド土地情報局(LINZ: Land Information New Zealand)は、NZGD2000(New Zealand Geodetic Datum 2000)において、2000年1月を元期とする定常的な地殻変動に対応する「Semi-dynamic Geodetic Datum」を採用しました。
日本では世界測地系に移行した改正測量法の翌年2003年5月に、国土地理院技術協議会による基準点体系分科会(掘吠鷙霆颪NZGD2000を参考にして「セミ・ダイナミック測地系」の導入を提言しました。2004年6月の測量法第12条に基づく「第6次基本測量長期計画」は、定常的な地殻変動への対応を定めました。2007年5月に交付された地理空間情報活用推進基本法第2条は、位置情報は時間の関数であることを規定し、翌年4月の同基本計画は、基準点情報の維持管理にセミ・ダイナミック補正を行うことを定めました。こうした経過の後、2009年12月に「公共測量におけるセミ・ダイナミック補正マニュアル」が公表されました。続けて、2011年3月31日の作業規程の準則の改正に伴い、第43条にセミ・ダイナミック補正の条文が追加されました。

図-8 ニュージーランドプレートの
境界と地殻変動(年間数cm)


5.おわりに
東北地方太平洋沖地震により大きな地殻変動を生じた地域は、元期2011.4と公表されています。測地成果2000のフレームは「ITRF94」ですが、元期2011.4の地域のフレームは「ITRF2008」と説明されています。西日本・北海道のITRF94(元期1997.0)及び東日本のITRF2008(元期2011.4)が当分の間同居することになります。本文でも述べましたが、両元期の境界地域である神奈川と静岡を跨ぐ新東名高速のような長峡物の測量には注意が必要でしょう。 本文において[Semi-dynamic Datum]を「セミ・ダイナミック測地系」としました。2008年3月31日改正の公共測量−作業規程の準則はJPGISを導入しました。JPGISでは[Geodetic Datum]を「測地原子」としています。従いまして、作業規程の準則に従えば、「測地系」でなく「測地原子」とするのが良いかも知れません。 本文は、国土地理院のHPに掲載された内容及び国土地理院の報告会等の資料に基づいて作成しました。東北地方太平洋沖地震に伴う復旧測量は、進行中であり、成果改定地域の名称「測地成果2011?」等はまだ公開されていません。今後、国土地理院の説明が順次行われるでしょう。時期をみてその補強情報を提供したいと思います。
参考
・「セミ・ダイナミック」ってどんなものですか? 2009年2月
 弊社HP https://atmsp.aisantec.com/atmspark/modules/topic_32/index.php?id=5会員専用
・弊社発行「2011 CALENDER セミ・ダイナミック測地系」
 弊社HP https://atmsp.aisantec.com/atmspark/modules/news/article.php?storyid=423
・大滝茂、安部博:測量法第34条で定める「作業規程の準則」の一部改正について、月刊「測量」2011年7月号.
・小谷京湖、吉田賢司、畑中雄樹、宗包浩志、2009、GPS 連続観測システム(GEONET)解析固定点座標算出手法について、国土地理院時報No118、pp17-21.


2011年8月3日
技術顧問  中根勝見



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