図-5は、弊社が「2011年度版地殻変動補正パラメータSemiDyna2011.par」を使って最大剪断歪を計算した結果です。成果を改定した東日本1都15県の地殻歪みはゼロに近く、この地域でのセミ・ダイナミック補正はほとんどありません。成果改定地域である神奈川県(元期2011.4)と従来の成果の静岡県(元期1997.0)との境界付近では、30〜40ppm程度と地殻歪が大きくなっています。この境界付近における歪が大きいのは、実際の地殻歪が大きいのではなく、境界付近における地殻変動補正パラメータの不整合の影響による見かけ上のものと思います。
元期2011.4と元期1997.0の境界付近の見かけ上の地殻歪を解消するため、富山等北陸4県に緩衝地域のようなものを設けたようですが、岐阜県と愛知県との境界付近及び岐阜・福井県と滋賀県との境界付近では、見かけ上の若干の地殻歪が図-5から見えます。
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 図-5 電子基準点の成果改定・非改定地域の地殻変動(最大剪断歪)
この図は、「承認番号 国地企調第261号平成22年11月17日」における 2011年度版地殻変動補正パラメータSemiDyna2011.parを利用して作成したものである
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図-6は、図-5に示す緯度35°20′線上の静岡―神奈川の地殻変動補正を計算した結果です。静岡では約20cmの地殻変動補正がありますが、神奈川県の地殻変動補正はほとんどゼロになります。この不整合を境界で一挙に処理するのでなく、県境付近に緩衝地帯が設けられ、元期1997.0に対する約20cm補正値から元期2011.4のゼロの補正値へと徐々に段階的に減らしています。グラデーション処理とでも言えましょうか。 |
 図-6 静岡県(元期1997.0)−神奈川県(元期2011.4)間の段階的な地殻変動補正
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新東名道路のように、静岡県から県境を超え神奈川県へ通じる測量をした場合、公共測量の規定に基づく座標から算出した2点間は、実際の相対位置関係と異なります。国土地理院が提供しているF3解による日々の座標に基づいた2点間は、測量誤差の範囲内で、実際の相対位置関係になります。すなわち、元期1997.0と元期2011.4の地域における長峡物の測量成果は、公共測量と工事測量では異なった値となりますので、国土地理院に相談する必要があります。 |