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座標補正パラメータ「PatchJGD」の解説


約130年前に日本の測量が開始されてから、頻繁に地震に見舞われ大きな地殻変動が生じました。その都度復旧測量を行い、測量成果を修正してきました。地震に見舞われた地域の復旧測量の基本は、測量のやり直しである「改測」です。地殻変動地域が広大で、全部の地殻変動地域を測量できない場合、配点密度の疎な一ニ等三角点等の地殻変動から「内挿」により配点密度の高い三等三角点等の位置を推定することもありました。
2011年3月11日発生の東北地方太平洋沖地震(M=9.0)は、図1に示すような広範囲にわたって大きな地殻変動を起こしました。民事二課長通知によれば、国土地理院が測量成果公開の停止中の地積測量図は、規則第77条第2項に基づくいわゆる任意座標で作成することになっています。また、測量成果公開後は「追って通知する。」となっています。今後の測量技術的な手順の見通しを述べてみたいと思います。
図1 地震に伴う水平地殻変動(国土地理院HPより)
http://www.gsi.go.jp/chibankansi/chikakukansi_tohoku2.html

1.地殻変動が一様な地域での街区基準点等の復旧の技術的見通し
改正測量法が施行された2002年以降は、電子基準点が既知点として使われるようになりました。電子基準点は、連続観測であり、地震時の地殻変動が記録されています。この電子基準点の地殻変動を基準にした内挿計算により、座標補正パラメータがつくられ、三角点や街区基準点等の測量成果が更新されるようになりました。国土地理院の「PatchJGD」(パッチジェジーディー)というものです。
図1を見ると、震源が100km以上沖合であったことから、陸地の地殻変動は一様のように見えます。こうした地域のほとんどで、街区基準点等の復旧にあたってPatchJGDによる「座標補正パラメータ」が使われると思います。

1-1 PacthJGD 座標補正パラメータ(街区基準点等の元期座標への補正)
「地震後の電子基準点座標及び地震後に改測された三角点の座標」と「それらの地震前の元期1997.0の座標」との「座標差」から、地震時の地殻変動が計算できます。離散的に分布する電子基準点及び三角点の地震時の地殻変動から、格子点の地殻変動を内挿により求めます。図2に示す格子点の地殻変動が、「Patch JDG」「座標補正パラメータ」と呼ばれているものです。
地震以前に設置された地籍図根点、街区基準点及び公共測量の基準点等(図のP点)の地震時における地殻変動は、周囲の格子点上の値から内挿により求めます。地震前の元期1997.0の座標に地震時の地殻変動を加えて、地震後の元期1997.0座標とします。

図2  PatchJGD 座標補正パラメータ
 地震後の測地成果2000(元期1997.0)=地震前の測地成果2000(元期1997.0)+地震時の地殻変動 
以上の処理によって、何事もなかったように、地震後の元期1997.0の測地成果2000の座標が得られることになります。なお、格子点間隔は約1km×1kmです。
過去に発生した地震、2003年十勝沖(M=7.0)、2005年福岡県西方沖(M=7.0)、2007年能登半島(M=6.9)、2007年新潟県中越沖(M=6.8)、2008年岩手・宮城内陸(M=7.2)は、PatchJGDにより、既存の公共測量の基準点等の成果の更新が行われてきています。
http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/patchjgd/download/index.html

1-2 地積測量図は平行移動として処理可能
国土地理院が成果を公表するまで、地積測量図は任意座標扱いになるわけですが成果を公表した後の処理を考えてみます。
PatchJGD座標修正パラメータを公表した地域は、地殻変動が一様であることを"宣言"したことになります。又、図1に示された地震時の地殻変動の様子から、縮みは1キロメートル当たり数ミリメートルですから、地積測量図のような狭い範囲では、土地が平行移動したとみなせます。
従いまして、地震前に作成された地積測量図等の座標処理は、PatchJGDにより計算した「座標補正値」を加える簡単な処理で、事が足りると思います。
国土調査による地籍測量成果も同様に、座標補正値を加えた簡単な処理となるでしょう。地籍図を基にした不動産登記法第14条第1項地図も同様な簡単な処理となると思います。

図3  地積測量図は平行移動

2.地殻変動が不規則な地域での街区基準点等の復旧の技術的見通し
2004年新潟県中越地震(M=6.8)の場合、図4に示すように震源が内陸であって震源付近の地殻変動が不規則で、PatchJGDの手法は使えませんでした。このような地殻変動が一様でない場合、復旧は改測により測量成果が更新されます。地籍測量もやり直されました。新潟地方法務局の担当者は、地積測量図の処理など大変であったと思います。

図4 2004年新潟中越地震の地殻変動(国土地理院HPより)
震源付近の地殻変動は不規則
http://www.gsi.go.jp/1SEIKA/niigata-seika.htm
地殻変動には、液状化又は地割れのような局所的に不規則な一様でない場合もあります。図1に示した地殻変動でも、震源に近い海岸付近は、不規則な地殻変動が起きている可能正が高いところです。
こうした局所的に生じた不規則な地殻変動地域では、PatchJGDの使用は慎重にしなければならないと思います。
図5は、震源から約400キロメートルも離れた千葉県のディズニーランド付近の浦安市今川地区における液状化被害です。不等な地盤沈下により、地面が傾き、電柱や家屋が傾いてしまいます。筆者は、この地域を歩いて観察しましたが、地面の傾き凹凸は多く見られるものの、土地の面積が変化している様子を感じませんでした。測量によって確かめられなければなりませんが、平行移動として処理できそうな感じでした。

図5 千葉県浦安市今川地区
液状化による地盤変動で電柱や塀が傾く
2011年4月8日 筆者撮影

成果公開の時期
過去の国土地理院の処理の実績から推測すると、既存の公共測量の基準点等の多くは、PatchJGDによる手法で、更新されると思います。改正測量法時のTKY2JGDによる日本測地系から世界測地系への座標変換作業と、同様な工程になります。すなわち、地震前の座標を入力すると、地震後の座標が計算されてきます。国土地理院HPに無償のソフトウエアが公開されますが、弊社のWingNeoINFINITYにも装備されていますので、国土地理院が座標補正パラメータを公開すれば、直ちに対応できます。
ただし、くどいようですが、液状化や地割れなど局所的な不規則な地盤変動が生じた地域においては、それなりの対処が必要になります。その処理には、その地域に精通した土地家屋調査士又は測量事業者の活躍が期待されます。
基準点成果の公開時期は? 2003年の北海道十勝沖地震(M=8.0)の場合、測量成果が公開されるまで約1.5年を要しました。今回の場合国土地理院の意気込みもすごく、十勝沖地震の倍以上のスピードで作業が進んでいるようで、早い時期の測量成果の公開が期待されます。弊社は、遅れをとらないよう今から対処に万全を期しています。

2011年4月11日
技術顧問  中根勝見



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