HOME > 特設情報ページ


(大規模地震の復旧測量)
「PatchJGD」の座標補正パラメータと
セミ・ダイナミック補正の地殻変動補正パラメータの解説


 2011年3月11日発生の東北地方太平洋沖地震(M=9.0)は、広範囲にわたって大きな地殻変動を起こしました。公共測量基準点の復旧にあたっては【「PatchJGD」座標補正パラメータ】が使われると思います。電子基準点等が復旧した後【セミ・ダイナミック補正の地殻変動補正パラメータ】も使われるでしょう。これら【パラメータ】について技術解説を行います。

「PatchJGD」座標補正パラメータ(既存基準点の元期座標への修正)
 「地震後の電子基準点座標及び地震後に改測された三角点の座標」と「それらの地震前の元期1997.0の座標」との「座標差」から、地震時の地殻変動が計算できます。離散的に分布する電子基準点及び三角点の地震時の地殻変動から、格子点の地殻変動を内挿により求めます。図に示す格子点の地殻変動が、「Patch JDG」の「座標補正パラメータ」と呼ばれています。
 地震以前に設置された地籍図根点、街区基準点及び公共の基準点等(図のP点)の地震時における地殻変動は、周囲の格子点上の値から内挿により求めます。地震前の元期1997.0の座標に地震時の地殻変動を加えて、地震後の元期1997.0座標とします。以上の処理によって、何事もなかったように、地震後の元期1997.0の測地成果2000の座標が得られることになります。格子点間隔は約1km×1kmです。

 過去に発生した次の地震、2003年十勝沖(M=7.0)、2005年福岡県西方沖(M=7.0)、2007年能登半島(M=6.9)、2007年新潟県中越沖(M=6.8)、2008年岩手・宮城内陸(M=7.2)は、「PatchJGD」座標補正パラメータにより、既存の公共の基準点等の成果の更新が行われてきています。
  http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/patchjgd/download/index.html
 2004年新潟県中越地震(M=6.8)の場合、震源が内陸であって地殻変動が一様でなく、「PatchJGD」座標補正パラメータの手法は使えませんでした。地殻変動が一様でない場合、復旧は改測によることなります。

セミ・ダイナミック補正の地殻変動補正パラメータ(新設基準点座標への補正)
 既に設置されている公共の基準点等の成果更新には、主として「PatchJGD」座標補正パラメータの手法が使われてきています。今後電子基準点を使って1級基準点等の設置をする場合には、セミ・ダイナミック補正が必要になります。セミ・ダイナミック測地系に関しては2009年2月の解説をご参照ください。
  中根顧問の部屋 業界トピックス:「セミ・ダイナミック」ってどんなものですか?会員専用
  (※上記ページは会員専用コンテンツとなります。ログイン後にアクセスください。)
 セミ・ダイナミック補正は、電子基準点が復旧済みであることが前提となります。3月18日にジェノバは、電子基準点データの配信を復活させています。全面的な復活は、国土地理院による電子基準点の復旧を待たなければなりませんが、関東地方の桜の花の時期を過ぎ、つつじの花の時期まで待つようになるかもしれません。
 電子基準点が全面復活後、地震後の電子基準点の元期1997.0座標及びセミ・ダイナミック補正の地殻変動パラメータが公表されるでしょう。従来と同じようにセミ・ダイナミック処理すればよいことになります。

公共測量の基準点等への今後の対応
 過去の国土地理院の処理の実績から推測すると、市役所等が管理する既存の公共の基準点の多くは、既に述べましたように、「PatchJGD」座標補正パラメータによる手法で、更新されると思います。改正測量法時のTKY2JGDによる日本測地系から世界測地系への座標変換作業と、同様な工程になります。すなわち、地震前の座標を入力すると、地震後の座標が計算されてきます。弊社のWingNeoに装備されていますので、国土地理院が座標補正パラメータを公開すれば、直ちに対応できます。
 電子基準点を既知点として改測により基準点成果を更新する場合、国土地理院が提供する電子基準点の元期の座標値及びセミ・ダイナミック補正の地殻変動補正パラメータにより、従来と同じ工程の計算処理を行います。
 図は、「PatchJGD」座標補正パラメータ(X0)及びセミ・ダイナミック補正の地殻変動補正パラメータ(X)の関係を示したものです。


地積測量図への対応
 地積測量図の扱いに関しては、次の内容が示されているようです。
1.基準点測量成果の公表が停止された地域においては、不動産登記規則第77条第2項に該当する任意座標で対処する。
  http://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/sokuchikijun60007.html
2.地理院の基準点成果の復旧後の扱いは、おって連絡する。
3.地震前の測量成果を使った場合、地震後にその成果の点検を行い、相対的位置に変動がない(公差の範囲内)と確認されたとき、規則第93条に記録する。
 既に述べましたように、街区基準点等の多くは「PatchJGD」座標補正パラメータによる手法で、地震前の座標が更新されると思います。「PatchJGD」の座標補正パラメータは、一様な地殻変動が前提で作られるものです。又、国土地理院発表の地震時の地殻変動の伸長率は、2/10万程度です。「PatchJGD」を使う地域において、地積測量図のような狭い範囲では、土地が平行移動したとみなせます。ただし、液状化又は地割れのような局所的な不規則な一様でない地殻変動もあります。こうした局所的に生じた不規則な地殻変動地域では、「PatchJGD」の座標補正パラメータは使えません。国土地理院が、約20万点に及ぶ街区基準点等の成果を更新して地震後の座標として提供すれば問題ないのですが、それができない場合はその都度更新計算する必要が生じます。

まとめ
 過去の復旧作業の例を見ながら、今後の復旧の見通しを測量技術的視点から推定してみました。千年に一度といわれるほど規模の大きい地震であり、測量の基礎となる基準点の復旧作業も大規模になって、従来の発想を超えた処理方法が行われるかもしれません。また、標高の復旧方法に関しては、まだ把握しておりません。国土地理院の対応をみながら、適宜技術情報を提供したいと思います。


2011年3月23日
2011年3月28日加筆
技術顧問  中根勝見


パラメータについて
本稿が書かれた2011年3月時点で「セミ・ダイナミック補正マニュアル(案):平成21年3月」が使われていました。同第3条は、セミ・ダイナミック補正のパラメータとして「地殻変動パラメータ」の用語を用いていました。2011年3月31日作業規程の準則が改正され、第43条は「地殻変動補正パラメータ」の用語に改めました。又、改正準則第76条は、「基準点の復旧測量」に「座標補正パラメータ」及び「標高補正パラメータ」の用語を加えました。準則の改正に基づいて、本文の「パラメータ」関係の用語を修正しました。
なお、「測地成果2000導入に伴う公共測量成果座標変換マニュアル:平成13年3月」は、「地域毎に適合した変換パラメータ」「地域毎の変換パラメータ」「3パラメータ」「座標変換パラメータ」などを使いわけています。


2011年5月27日



 HOME > 特設情報ページ
当社は「プライバシーマーク」を取得しました。当社では個人情報保護方針を定め確実な履行に努めて参ります。
個人保護方針
このサイトは、企業の実在証明と通信の暗号化のため、サイバートラストのサーバ証明書を導入しています。Trusted Webシールをクリックして、検証結果をご確認いただけます。 当社保守対応製品一覧のご案内です。 ATMS保守サービスの内容及び@tmsParkについての
ご案内