準天頂衛星(QZSS) 4機体制等衛星測位時代のスマートサーベイプロジェクト

最近の業界情報
―入札不調,地籍調査関連,準天頂衛星

最近、私達の周辺で起きている入札不調,地籍調査関連,準天頂衛星等の出来事の一端を報告します。

1.入札不調

測量業界の高齢化

最近の建設業界において、ご存じのように入札不調が生じています。仕事があるのですが、建設業界の人手不足等が大きな原因です。測量業界では、東北地方を除いては目立った入札不調が生じていないようです。
昨年秋に行われたG空間EXPOにおいて、全測連の役員の方は"測量業界の高齢化が進み、災害復旧などに対応できなくなる。"と、近未来の入札不調を予言していました。
図1は、測量専門学校の生徒数の推移です。最高時は4,000人を超えていましたが、最近は約1/10の400人余りまで落ち込んでいます。測量士補受験者数は、この10年間に約2万人から約1万人に半減しています。現場の第1線の人手不足の懸念を裏付ける資料になっています。

図11 測量専門学校生徒数の変遷
図1測量専門学校生徒数の推移

2.地籍調査 ― 進捗率:全国平均50%,都市部23%,林地43%

1月22日に(一社)日本国土調査測量協会が、国土交通省地籍整備課長を招いて、2014年度の地籍調査予算説明を行いました。末尾の表に示す内容で目ぼしい話はほとんどなく、強いて言えば、MMSによる地籍調査の検討のための「地籍整備推進支援事業」にわずかな予算が計上された程度です。
1月31日には、国土交通省地籍整備課主催による「民間事業者の測量成果を活用した地籍整備の推進の関する説明会」が行われました。すなわち、民間が実施した測量成果のうち、地籍調査の規定等に合致したものを地籍調査の成果として採用する内容です。例えば、土地家屋調査士等が行った「登記基準点」は、一定の条件を満たせば、地籍調査の成果として活用が可能になります。いわゆる、国土調査法第19条5項の指定に基づく成果の活用です。ここでの民間事業者に国が期待する事業量は、全体の1割弱です。
1951(昭和26)年に国土調査が開始され、60年余りの歳月が経過しました。進捗率は全国平均50%、人口集中地区23%、林地43%です。この延長でみるならば、都市部の完成は200年後となるでしょう。

地籍調査記載例

2010年度からスタートした第6次国土調査事業十箇年計画に伴う諸規定の改正に対応した2011年版の地籍調査の記載例がつくられました。記載例は、計画機関の担当者の方々のお手本です。
図2がその記載例です。筆者が目を通すだけでも、付箋の箇所(100頁以上)の記述の修正が必要になります。例えば、「数値に単位が付されていない」「計算式と記載例の内容が異なる」「図が不鮮明」等などです。また、「太陽による方位角観測」が示されています。筆者は、昔々に太陽観測を行いましたが、今、太陽観測による方位角観測をできる技術者も少ないのではないでしょうか?
この記載例平成23年度版は、「地籍整備課長通知」という公的なものですが、各方面から意見があったようで、現在平成26年度の更新版がつくられています。

図2 不適切や誤りの記述に対する筆者の付箋
図2不適切や誤りの記述に対する筆者の付箋

計算式

図2の文献には、国土調査課長通知による計算式が示されています。例えば、GPS観測方程式は、旧法の日本測地系のままです。2002年度から施行された世界測地系の式に改正されていません。その他、式の誤りや雑な形式を含め、記載例と同様に多くの課題を含む内容になっています。
先述した1月31日における地籍整備課の説明会の後、担当者に改訂版が必要であることを述べました。担当者は、現在内部で検討中であるとのことなので、やがて改訂版ができるものと期待しています。

国土調査法施行令

国土調査法施行令第15条に別表が示されています。現在測量業界では使われていない「平均二乗誤差」とか「出会差」のような用語が見られます。また、「地籍細部図根点」とは別な「地籍基本細部点」のような用語が規定されています。こうした古い用語などは、"整理した方がよいのでは"と関係者から時々聞きます。

国際的な地籍調査の動向

国際測量者連盟(FIG)が進めている「Cadastre 2014」は、最近の地籍に関する6つの声明を示しています。その3番目の声明を図3に示しました。「地籍図は消滅する! モデル化万歳!」としています。「平板測量時代の図郭や縮尺化した図面は、最近のモデル化したデータの扱いでは不要になる。」というものです。Googleの地図をお手本にすれば、縮尺や図郭が不要であることは、誰でも納得!でしょう。この第3声明はISO 19152 「土地管理領域:LADM(Land Administration Domain Model)」と密接な関係があります。また、FIGは、地籍図の3D化も進めています。水害や津波などの被害の多い日本において、地籍図の3D化は防災上も重要であると思います。
日本土地家屋調査士会連合会のホームページによると、同連合会は、FIGの総会に継続参加していて、熱心に取り組んでいるようです。

3.マルチGNSS時代の到来

2010年に準天頂衛星初号機が打ち上げられ、2018年の実用化を目指して、現在さまざまな実証実験が行われています。地籍調査の都市部や林地での進捗率はそれぞれ23%および43%と特に遅れていますが、準天頂衛星なので、こうした地域において観測時間帯が広まります。地籍調査等測量分野での活躍が期待されています。

自民党G空間合同部会

自民党の「G空間合同部会」は公開されていて、弊社では必ず参加し、情報収集を行っています。この合同部会の大きな主題は、準天頂衛星の活躍についてです。

G空間EXPO

2013年秋に開催されたG空間EXPOでは、入口の一等地に最大の広さを占めた内閣府・経産省・JAXA・SPAC等官民7機関が準天頂衛星関係の出展を行っていました。このG空間EXPOでの最大のイベントでした。

高精度衛星測位サービス利用促進協議会
「QBIC」:QZSS Business Innovation Council

2013年7月26日設立総会があり、260名が参加しました。現在、大学・民間企業・公益法人等約200機関 で構成されています。
衛星測位利用推進センター(SPAC)とソフトバンクテレコム株式会社は平成25年5月経済産業省による平成25年度「準天頂衛星システム利用実証事業」に係る補助事業に共同申請し、これが採択されたことを受け準天頂衛星初号機「みちびき」を利用した位置情報の測位精度についての実証実験を昨年秋に鹿児島県種子島と屋久島で実施いたしました。一般参加者も含め、400人余りがこの実証実験に参加」しました。当然、弊社も参加しました。
図4は、電子基準点(南種子)付近における取得した走行データ(6走行;往復あり)とその結果を地図に重ねたものです。東南東に約10メートル余りのズレが生じていますが、評価用の背景として利用したオルソ画像にズレが生じていると思われます。一般的に、民間が作成した地図や写真の品質が明らかにされていない場合が多いので、衛星測位結果が正確に地図上に表示されるとは限りません。

図4 測位結果と写真上の位置のずれ(10メートル余り)
図4測位結果と写真上の位置のずれ(10メートル余り)

準天頂衛星2014年カレンダー

弊社は、準天頂衛星時代を先取りした「2014年カレンダー」をつくり、その啓蒙活動を行っています(図5参照)。

図5 準天頂衛星カレンダー 2014年1月
図5準天頂衛星カレンダー 2014年1月

このカレンダーをみれば、衛星測位の原理から衛星測位で得られる座標の質まで理解できると思います。図6は、地殻変動補正を表しています。測量法に基づく位置は元期における位置ですが、衛星測位では現在の位置になり、地図の位置が正確であっても、地殻変動補正分だけ食い違います。例えば、沖縄における食い違いは、約1メートルになります。

図6 地殻変動補正=元期から現在(今期)までの日々の地殻変動量の累積量を示す
図6地殻変動補正=元期から現在(今期)までの日々の地殻変動量の累積量を示す
図7 平成26年度地籍整備関係予算概算決定総括表
図7平成26年度地籍整備関係予算概算決定総括表

2014年 2月
技術顧問 中根 勝見

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