ご提案:地積測量図に高さ情報を

このたびの豪雨により被災された皆様には心よりお見舞い申し上げますとともに、弊社では一日も早い復旧に向けた技術支援に取り組んでまいります。

ご提案  地積測量図に高さ情報を

この9月の10日から11日にかけての豪雨は、関東・東北地方に大きな被害をもたらしました。筆者は10年程前から、地積測量図に高さの情報を加えることによって、地震に伴う地殻変動による位置の復元や風水害の影響の軽減情報に役立つことを訴えてきました。ここに改めて、地積測量図や地籍図の3D化をご提案申し上げます。

図1 堤防が決壊した常総市三板町地区(背景は筑波山、9月15日、筆者撮影)
図1 堤防が決壊した常総市三板町地区(背景は筑波山、9月15日、筆者撮影)

1.地積測量図の3D化

図2は、2006年6月の栃木県塩谷調査士会での講演資料の一部です。1891年濃尾地震に伴う地震断層で、最大6メートルもの段差が生じました。このセミナー後も2006年度から2014年度まで、全国の60箇所の調査士主催の研修会に参加させていただきました。そこでは、3D地積測量図の作成をご提案申し上げてきました。

図2 濃尾地震時の断層(2006年6月栃木県塩谷調査士会講演資料)
図2 濃尾地震時の断層(2006年6月栃木県塩谷調査士会講演資料)

2.地籍図の3D化

図3は、弊社が実施した2014年全国セミナー(大阪、静岡、埼玉、東京、郡山、仙台、北上、宮崎、鹿児島、福岡、名古屋)での講演資料で、このセミナーは「標高」を中心課題にしたものです。

図3 3D地籍図の提案(2014年弊社全国セミナー資料より)
図3 3D地籍図の提案(2014年弊社全国セミナー資料より)

地積測量図だけでなく、地籍図の3D化も当然のことで、国際的にも3D地籍図が進められていることを紹介(3D Cadastres web site http://www.gdmc.nl/3DCadastres/ )したものです。又、2011年東北地方太平洋沖地震に伴う液状化現象による地盤の上下変動への対応には、地積測量図の高さ情報が役立つことを述べております。

3.地積測量図3D化のご提案の具体的内容

以下は、弊社が実施した2015年全国セミナー(横浜、大阪、名古屋、岩手、仙台、郡山、熊本、福岡、京都、横浜)における地積測量図の3D化の具体的な提案です。

3.1 準天頂衛星等衛星測位の高度化

図4は、近未来の準天頂衛星を含む衛星配置です。格段に衛星測位成果の信頼度が高まります。特に、準天頂衛星は、高さ方向の精度を向上させます(2014年弊社全国セミナー資料より)。こうした衛星測位時代の新しい環境を活用しない手はありません。なお、現在の準天頂衛星計画は、7機体制になっています。

図4 近未来の衛星配置(2014年弊社全国セミナー資料より)
図4 近未来の衛星配置(2014年弊社全国セミナー資料より)

3.2 3D地積測量図作成の方法

図5は、3D地積測量図作成の方法を示したもので、2015年弊社全国セミナーにおいて、新しいビジネスとして提案したものです。その内容は、次のようなものです。

?不動産登記規則第77条第2項に基づいて、近傍の恒久的地物を既知点として、従来どおりに地積測量図を作成します。ただし、筆界点の高さを測ります。
?恒久的地物上においてネットワーク型RTKにより世界座標を観測します。この観測値を既知点として、地積測量図の世界座標化と高さの3D座標を得ます。

電子基準点を既知点として基準点測量を省略して一挙に細部測量を行う方法です。この方法によれば、近傍に街区基準点のような基本三角点等が存在しない場合でも、地積測量図の世界座標化と高さが同時に実現できます。ネットワーク型RTKは、水平座標の他標高観測値が得られますので、地積測量図の3D化が極めて容易に実現します。

図5 3D地積測量図作成の方法(2015年弊社全国セミナー資料より)
図5 3D地積測量図作成の方法(2015年弊社全国セミナー資料より)

3.3 基準点測量の省略

電子基準点から、基準点測量を省略して、一挙に細部測量を行う方法は、地籍調査作業規程準則第70条5に規定された方法であり、公に認知された方法です。ただし、地籍調査の場合は、筆界点上で座標の観測を行うもので、法務省が認めていない方法です。従いまして、細部測量点におけるネットワーク型RTKの観測場所は、筆界点上でなく、恒久的地物又は細部図根点上で行います。世界座標が得られた細部図根点を既知点として、TSにより一筆地測量を実施し、筆界点の3D座標を得ます。

この方法は、弊社が開発した「3D-BMB」ソフトウエアにより、簡単に実現できます。

4.MMSによるハザートマップの作成

昭和34年の伊勢湾台風による洪水・高潮被害が地形分類結果と深く関係していたことが発端となり、国土地理院は、土地条件図の作成を開始しました。現在、ハザードマップ作成のための基礎情報として大規模な豪雨災害及び東南海・南海地震などの防災対策推進地域を中心に整備されています。 土地条件図は、2万5千分1地形図の上に
・  地形分類(山地、台地、低地など)
・  地盤高線(1m間隔の等高線)
・  主な防災関係機関
等を重ねて表示したものです。(以上、国土地理院web site http://disaportal.gsi.go.jp/totijouken/

MMSによる標高図は、高さの20cm程度の高精度のものが比較的簡単に作成できます。図6は、2011年東北地方太平洋沖地震時における上下変動図です。三陸道における地震前の2010年12月と後の2011年4月の弊社のMMS観測によるものです。図7に示した国土地理院による上下変動をより詳細に示しています。MMSにより、きめ細かな正確なハザードマップの作成が可能です。

図6 MMS計測による石巻港付近の上下変動
図6 MMS計測による石巻港付近の上下変動
【背景地図等データ:国土地理院の「電子国土」Webシステム】
図7 東北地方の地震時の上下変動
図7 東北地方の地震時の上下変動
【「本震(M9.0)に伴う地殻変動等変動量線図(上下変動量)」国土地理院による】

  おわりに

昨年12月岐阜で行われた第11回地籍問題研究会において、「3D地籍」の話題提供がありました。この研究会は、調査士が中心になって運営されています。

2015年9月14日
技術顧問 中根 勝見

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